3人ぐらし日記

大人ふたりと子どもひとり

母性はどこからやってくるのか

  世の出産体験談を眺めていると、どうやら母親には出産した瞬間に母性が芽生えて「かわいい!」と思えるタイプと、世話をしているうちに徐々に「く…かわいい…!」となっていくタイプがあるようだ。

  私は後者で出産直後は「出たー!」とトイレ後のような感想で、息子と対面した時も「おー、君がお腹にいたのか」くらいなものだった。「やっぱ生まれたては猿っぽいな」「髪の毛ふさふさやん」とも思ったが、「かわいいー!」みたいな感情はなかった。

  母子同室の産院だったが、出産したのは夜だったので、そのまま預かってもらった。翌日、沐浴などを終えて部屋に迎えたあたりでやっと「うちの子」という気がしてきた。世話をし始めたことがきっかけだったと思う。お互いに初心者ながらタイミングを合わせて乳を吸わせ、4日目くらいで乳首が切れて半泣きになったり、寝付けなくて夜通し抱っこし、子守唄の代わりに壁に貼ってあった乳腺炎予防のポスターを読み上げたり、そんな迷走期の一週間だった。そうこうするうち「いまナースステーションで泣いているのは我が子では?」と泣き声で息子を判別できるようになり、親になったなぁと実感した。

  いまではすっかり、息子の幸せを願う母になったと思う。